FDM方式(熱溶解積層法)3Dプリンターの印刷設定が、耐摩耗性に与える影響
2019.06.24
リビアにあるBANI WALID高等理工学院機械エンジニアリング課の研究員たちは、スクリーニング計画を実施し、FDM方式(熱溶解積層法)3Dプリンターにおいて、積層ピッチ、空隙、内部充填密度、XY平面の印刷方向、印刷幅などの各印刷設定によって、耐摩耗性にどのように影響しているか検証しました。造形物の材料はPC-ABSです。
摩耗試験は、室内温度24℃の乾燥した環境で、高さ35mm×直径6mmの造形物に、回転速度300r/min、10Nの圧をかけ、1万回転させた時の摩耗量を算出しました。摩耗量(Specific wear rate=SWR)の計算式は以下の通りです。
■図(a) 摩耗量(SWR値)のグラフ 図(b) 内部充填角度が造形物の表面に及ぼす影響
試験の結果、積層ピッチが粗くなるほど摩耗量(SWR値)は上昇する為、耐摩耗性は低くなりました。積層ピッチが0.1mmと0.3mmの造形物を比べると、細かく設定した0.1mmの方が、試験後の表面が滑らで仕上がりが良くなりました。
密度は、空隙を増やすほど細孔が形成され、摩耗量(SWR値)は下がっています。図(b)は内部充填角度を変えて造形したサンプルの比較図です。内部充填角度が90度に近くなるほど摩耗量(SWR値)は顕著に低下します。また、印刷幅と外壁の枚数が下図の中間値になるほど耐摩耗性に優れている事もわかりました。
今回のスクリーニング計画では、FDM方式(熱溶解積層法)の印刷設定が、摩耗率に及ぼす影響を研究しました。
結果、各印刷設定のうち、内部充填角度、積層ピッチ、印刷方向、外壁の枚数が、摩耗性に最も影響を与えるということが分かりました。その中でも、積層ピッチが細かく、印刷方向が0度に近いほど摩耗率は低くなり、内部充填角度が90度に近いほど摩耗率が低くなることがわかりました。
本研究は、造形物から摩耗量と微細構造を検出し、印刷設定と摩耗メカニズムの関係を調べました。結果、FDM方式(熱溶解積層法)は印刷設定によって摩耗性に影響が出ることが分かり、それは、PC-ABS以外の材料にも言える可能性が高いと理論づけました。
参考文献:
Ahmed M O , Hasan M S , Lal B J . Analysis of wear behavior of additively manufactured PC-ABS parts[J]. Materials Letters, 2018, 230:261-265.